あらすじ 

 

 

自分はどこにも居場所がない「余り物」。高校1年生の広山渡は、自身の人生に対して悲観的になっていた。ある時渡は、彼に好意を寄せる同級生の大崎波香から事情を聞かれ、誠意から過去を語りだすが……

 

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赤子の鳴き声。暗闇の中に浮かび上がる広山千夏。跪き、足元には赤子。 

 

 千夏は赤子をあやし、やがて鳴き声はやむ。 

 

 

 

 広山「渡……お父さんが言ってたの。渡はね、余り物なんだって。ふふ、私とおんなじ。」 

 

 

 

 広山が赤子の首を絞める。 

 

 

 

 広山「ごめんね渡、ごめんね、ごめんね!ごめんね!!!私も一緒だから!!」 

 

 

 

 暗転。 

 

  広山渡が机から起き上がる。憔悴。隣には大崎波香が驚いた顔で見ている。 

 

 

 

 渡「……」 

 波香「ねえ、大丈夫?」 

 渡「ああ、うん、大丈夫、ちょっと、」 

 

 

波香からペットボトルを受け取り、飲む。そして波香が隣にいることに気づく。 

 

 

 渡「え!?大崎さん!?なんでうちにいるの?」 

 波香「時間かかったね。峠さんが入れてくれたの。」 

 渡「ええ?!」 

 波香「おじさんいい人ね。彼女ですって言ったらすんなり。」 

 渡「か、彼女?!」 

 

 

 峠清彦が奥から顔を出す。 

 

 

 峠「渡、起きたか。」 

 渡「峠さん、なんで入れちゃっ、」 

 峠「渡、お前を見直したぞ。」 

 渡「え?」 

 峠「俺はな、お前が学校でいじめられてるんじゃないかと……でも無用な心配だった、あんなに勇敢で、」 

 

 

峠康子の声が響く。 

 

  「ちょっとあんたぁ!!いつまで邪魔してるつもりだい!!」 

 

 

 峠「わかったよ康子ぉ!!(波香に)ごゆっくり。」 

 波香「はい。」 

 

 

 峠、去る。 

 

 

 渡「いったい何を話したの大崎さん。」 

 波香「(照れながら)私たちが初めて言葉を交わした時のことをね、」 

 渡「嘘だ、教科書貸した話でああはならないよ?」 

 

 

 車のエンジン音。そして遠ざかる。 

 

 

 渡「え、おじさん……もしかしておばさんも?」 

 

 

 渡、波香を振り返る。 

 

 

 波香「やっと二人きりになれた。」 

 渡「あの、その、」 

 波香「えーい、」 

 

 

 波香、渡にとびかかる。そしてくすぐる。 

 

 

 渡「あ、ひいっ、くすぐっ、助けて、」 

 

 

 ひとしきりくすぐられる。 

 

 

 渡「はあ、はあ、」 

 波香「ねえ渡くん、いい加減、この間の返事が聞きたいんだけど。」 

 渡「……えっと、」 

 波香「ダメなら、ダメでもいいよ、私、打たれ強いから。」 

 渡「違う、そ、そうじゃなくてさ……僕、どうしたらいいのか……」 

 波香「あ、ごめん、がっつきすぎたわ……

渡くんってさ、なんか、抱えてるよね。私、結構めんどくさい家の事情あったからさ、わかっちゃう、みたいな?」 

 渡「え……」 

 

 

 波香「返事のほうはいったん置いといてさ、なんか私にできること、ある?話くらいなら聞けるけど?」 

 渡「……大崎さん、」 

 波香「何?」 

 渡「そのうち話さなきゃいけないと思ってたんだ、僕の身の上のこと。」 

 波香「うん。」 

 渡「……僕、実は施設育ちなんだ。」 

 波香「へえ。」 

 渡「先週、前に僕を預かってたおじさんが亡くなってさ……

それで、わからなくなっちゃったんだ、自分の心が、ていうか……ど、どこから話せばいいのかな……」 

 波香「落ち着いて。ゆっくりでいいから。」

渡「う、うん……僕が施設に入ったわけから話すね。」 

 

 

 渡、うなずく。 

 

 証明変化、広山千夏と児童相談所職員の長岡勇(ナガオカ イサム)が登場。広山は泣きじゃくり取り乱している。 

 

 

 長岡「落ち着いてください!」 

 広山「お願いします、もう自信が無いんです、今にも渡を殺してしまうかもしれないんです!」 

 長岡「聞いてったら!何があったの?旦那さんはどこ?」 

 広山「この子を殺したくない……」 

 

 渡「広山千夏さんは僕の血縁上のお母さん。父親の暴力に耐えられなくて、夜に児童相談所へ駆け込んできた。」 

 

 長岡「分かった、分かったから。一時保護ね。お子さん大丈夫だから!」 

 広山「私は、母親にはなれなかった……」 

 長岡「ああもう、なんで俺が宿直の時に限って……」 

 

 

 人物入れ替わる。広山千夏が去り、養護施設職員、深島修司(フカジマ シュウジ)が来る。